[ましこのひとvol.19]後継者がいない果樹園を継承した地域おこし協力隊の挑戦

ましこのひと2021年02月15日

益子町の農業の活性化に貢献されている地域おこし協力隊の城間宥哉(しろま ゆうや)さん、橋本玲英(はしもと れい)さんに活動についてお話を伺いました。

『地域おこし協力隊の城間さんと橋本さん』の画像

城間さんは沖縄県出身、橋本さんは北海道出身。1995年生まれの同い年のお二人です。
城間さんは2019年11月に地域おこし協力隊として着任し、農業を働き方の選択肢とするためのプランニングに関する活動として、果樹園地継承をモデルとする事業の検討などを行っています。
橋本さんは2020年5月に着任し、果樹園地継承をモデルとする事業の実践として、ぶどうの生産管理及び販売などを行っています。
お二人は、後継者がいないため存続が危ぶまれていたぶどう農園の管理を通して、果樹の栽培技術を学びながら、任期終了後の起業・就農に向けてそれぞれ準備をしています。

 

 

Q.1 どのような活動をしていますか?

 

 城間さん:

2019年11月から翌年3月にかけて、益子町の果樹農家を対象に、後継者の有無に関するアンケート調査を実施しました。 その結果、農家自身が高齢化を迎える中、「後継者がいない」という回答が全体の8割を越えました。 さらに、後継者探しについて益子町からの協力の要否についても尋ねたところ、「町の協力が必要」であり「後継者がすぐに必要」と回答した農家が一軒ありました。そこで、その農家が所有していたぶどう農園を継承し、現在は橋本さんを主軸に二人で管理しています。

アンケート結果から「とりあえず誰かが管理しないといけない」という思いでぶどう栽培を始めましたが、やってみたら面白かったんです。

『『ぶどう農園』の画像』の画像

夏のぶどう農園の様子

樹齢30年を超える木々には、収穫を待つぶどうたちがたわわに実っています。

 

 

 橋本さん:

農業を仕事とする大変さは、地域おこし協力隊着任前から予想していましたが、実際にぶどうを栽培してみると、思っていたよりも作業が多く、”育てて売るだけ”ではないのだと改めて実感しています。

ぶどうの木は、春になると茶色の枝から緑色の芽が出てくるので、成長度合いを合わせるために、芽を間引く作業を行います。農園一面にタンポポが咲き、綿毛が舞う中で春を感じながら作業しました。
その芽も一か月後には数十センチに伸び、房が出来てくるので、良い房の形になるように成形します。房から花が咲いた後、種なしぶどうにするためにジベレリンという薬液に付ける作業を行います。
夏になるにつれて、実が小指くらいの大きさに生長します。付きすぎた実を間引いた後、ひと房ずつ袋がけをします。この作業によって、農園内が緑の世界から真っ白の世界になるので、ぶどうが植物から食べ物になる区切りを感じました。

8月下旬以降は、9月をピークに収穫と出荷に追われました。11月頭までぶどうを収穫し、道の駅ましこと農園の直売で販売しました。

 

『道の駅ましこに並ぶぶどう』の画像

道の駅ましこの店頭に並ぶぶどう(2020年秋に撮影した写真)

 

 

さらに、「形が悪い」などを理由に房で販売できなかったぶどうは、実を一粒一粒丁寧に取り、約300gをカップに詰めて販売を行いました。
ぶどうを気軽に手に取っていただきたいという思いから始めましたが、予想以上に好評をいただきました。

全てのぶどうを生食で販売出来ることがもちろん一番ですが、形が悪いと売れない場合もあるので、いい案を取り入れて色々な加工品も作っていきたいと思ってます。

 

 

 城間さん:

11月には、道の駅ましこで「出張ぶどう狩り体験」を行いました。

この企画は、昨秋開催された関係人口ツアー「ましこの暮らしと仕事をめぐる旅〜果樹産地継承編で行った、ぶどうの新しい売り方を考えるワークショップの中で、参加者から提案していただいた案を採用しました。
橋本さんも「それはやったほうがいい」と前々から思っていたようなので、「じゃあそれ、やってみましょうか」と開催しました。

お客様から好評を博したので、今年は近所の農家さん達を募り沢山のぶどうを用意して、また開催したいと考えています。

 

『『ぶどう収穫体験』の画像』の画像

出張ぶどう狩り体験の様子

ぶどう棚に見立てたテントにぶどうを紐で吊り、好きなぶどうを収穫してもらいます。

 

 

 橋本さん:

収穫作業が終了した11月中旬以降は、色が付かなかった房の処分や枝の剪定、畑に肥料を撒いたりしました。そのほかに、成果をまとめて報告する必要があるため、事務作業などをしています。

今後は二年目の実りに向けて、肥料が足りないところにさらに肥料を撒いたり、試験的に耕うんをしたいと考えています。
春には、昨年12月から仮植えしている新品種の苗木を、ぶどう棚の棚面が開いているところに本植えする予定です。

 

『『ぶどうの苗木』の画像』の画像

袋を被せて育てているシャインマスカット・あずましずく・クインニーナという3種類のぶどうの苗木

 ぶどう農園の片隅でひっそりと春の本植えを待っています。

 

 

Q.2 地域おこし協力隊に応募したきっかけはなんですか?

 

 城間さん:

僕は、元々農業がしたかったんです。自分で作ったものが売れたら楽しいだろうと思ったことがきっかけです。
栃木県内の大学に通っていたこともあり、益子町は馴染みのある町だったので、益子町で農業をやってみたいと考えていました。僕は沖縄県出身ですが、沖縄県と益子町はどちらも焼物の産地であり、交流もあるので、それを活かした作物作りをしてみたいと思ったんです。
そんな折に、地域おこし協力隊を募集しているという話を聞きました。
地域おこし協力隊としての活動を通して、一人前の農家になるための前準備が出来るのではないかと考え、応募しました。

 

 橋本さん:

地方で「果樹」を育ててみたいと思い、移住関連サイトで探していたところ、益子町の地域おこし協力隊の募集案内を見つけました。
益子町は小さい頃に訪れたことが一度あるだけで、縁もゆかりもない未開の地でしたが、都心からほど近く、適度な田舎感が良さそうな町だと思ったので、地域おこし協力隊に応募しました。

 

 

 

Q.3 地域おこし協力隊として活動している時の印象的なエピソードを教えてください。

 

 城間さん、橋本さん: 

ぶどうを用いた加工品の一つとして、今後ワインを作ってみたいと考えていたところに、町内の酒造などからお声がけをいただいて試験的に限定生産し販売することができました。ピオーネという品種のぶどうの果汁を絞り、アルコールや糖を添加したワインです。

さらに、「ミチカケ」という益子町の人や暮らしを紹介するフリーペーパーの中で、とある益子町出身の方が、イタリアへ留学してワインの勉強をしているという話を読みました。
その方が最近留学を終えて現在は益子町内に戻ってきていると聞き、益子町農政課の職員から紹介していただいたんです。タイミングよく、出会うことが出来たと思いました。 

 

Q.4  今後の目標を教えてください。

 

 城間さん、橋本さん:

協力隊としての活動とぶどう作りを1年通してやってみて、まだまだかなと思いました。
農園が一つだけですと、僕たち二人が農業だけで食べていくのは収入的に難しいので、今後は経営農地の規模を拡大するために、新たな農園を探していきたいと思っています。
ぶどうは一年間通して作ったので、今後もこうやっていけば、食べていけるだけの収入を得ることが出来るのではないかというイメージはなんとなくあります。そのため、理想はぶどうを作りたいと考えていますが、借りることが出来る農地の問題もあり、他の作物の栽培も検討しています。

 

 城間さん:

ゆくゆくは、自分の手で家を建ててみたいです。犬を飼って暮らしたいです。

 

 橋本さん:

現在ぶどうの直売は前所有者の敷地を借りて販売しているので、独自の直売所を建てたいです。

 

 

 

Q.5 益子の好きなところ・良いところを教えてください。

 

城間さん、橋本さん:

景色が良くて、どこを見てもきれいだなと思います。
農園がある大羽地区の景色が好きです。農園からすぐに見える山も良いです。12月に訪れた小宅古墳群もきれいでした。

 

橋本さん:

観光地化されていて、ほどよく賑わいがあるところです。

 

城間さん:

色々な果物や野菜が食べられること。作物をなんでも育てようと思えば、育てられる環境が良いと思います。
益子町の農業の強みは、東京・宇都宮等の都市圏と距離が近く、販路が開拓しやすいのではないかと考えています。さらに、益子焼に代表されるように、全国的にも比較的ブランド力がある町だと感じています。

 

『地域おこし協力隊の橋本さんと城間さん』の画像

 

 

 

  ※本記事の内容は2020年9月開催のオンライントークライブ「農からはじめるましこの暮らし」内でお二人がお話されていた内容と、2021年2月にインタビューした内容を基に編集しています。

 

 

城間さんと橋本さんが育てたぶどう

 

『ぶどう』の画像

城間さんと橋本さんお二人の最新の活動情報については、二人の共同フェイスブック「すえっ子、」と、益子町地域おこし協力隊のフェイスブックをご覧ください。

 

 すえっ子、Facebook

 益子町地域おこし協力隊Facebook

 (新しいウインドウで開きます)

 

お二人が育てたぶどうは、8月下旬~10月下旬まで収穫を行い、
農園内の直売と道の駅ましこにて販売予定です。

さらに道の駅ましこでは、干しぶどうや、
ぶどう果汁を入れたクラフトジュースなどの加工品も取り扱っています。(期間限定。無くなり次第終了)

 

『『干しぶどう』の画像』の画像

ぶどう農園(直売)

栃木県芳賀郡益子町大字上大羽1350

 

道の駅ましこ

栃木県芳賀郡益子町大字長堤2271
TEL:0285-72-5530
FAX:0285-72-5531
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